身体全体を使ったコミュニケーション
日本人は、身体を使ったコミュニケーションが苦手だと言われています。しかし介護業界の仕事では、言語的会話以外のボディランゲージは非常に大事です。なぜなら年をとると言葉を使った論理のやりとりよりも、相手の身体感覚に訴えるコミュニケーションのほうが、お互いの気持ちが伝わりやすいからです。
声の出し方を含めた身体の使い方は、介護の仕事とは違う「もう一つの介護技術」と言ってもいいでしょう。ところが実際には介護研修でも教科書でも、身体の使い方について触れられることは、ほとんどありません。仮に、そのつもりがなかったとしても、介護する際の身体の振る舞いが粗雑なために気がつかないうちに高齢者を威圧していたり、不愉快な思いをさせているとしたら、せっかくの介護技術も活かすことはできません。
それは声の出し方にも同じことが言えます。やさしい会話をしているつもりでも、声のトーンが弱くて気持ちが高齢者にうまく伝わらないことや、逆にやたら声が大きいだけで高齢者には馴れ馴れしい感じを与えてしまうこともあるものです。介護業界の仕事では、相手の状態を感性で感じながら自分の「出力」を調整する技術も必要になります。心と心の会話法、それが身体のコミュニケーションなのです。
身体や声の使い方にちょっとした工夫をすることで、高齢者がより身近な存在となりえます。ボディランゲージの基本は手足であり、心のこわばりは手足のこわばりとして現れるもの。それが高齢者に伝わると相手までこわばるので、まずは手足のこわばりをゆるめることからはじめてみましょう。